建築材料を知るーコンクリート,セメント,モルタル。(後編)
―コンクリート,セメント,モルタル。(後編)
さて,前回の続編,後半です。
セメント,モルタル,コンクリート,
この3つの意味を押さえておかなければ今後の建築物や外壁の劣化について
語ることはできないといっても過言ではありません。
どうぞ,お付き合いくださいませ。
まず,セメントやコンクリートの性質から説明したいと思います。
―コンクリートの化け学。
砂場や砂浜で立派な砂のお城を作ろうとするとき,
皆さんは水で湿らせて形を整え,完成させますよね。
でも,雨が降ったり,波がそのお城にかぶってしまえば,
水のせいでどろどろの状態になって流されてしまいます。
他にも,小学校などで「粘土」で何かの形を創ろうと
工作された経験があれば,形を整えたあとは
“乾かす”=“固まる”
だとお考えだったと思います。
でも,最近の手芸用のものはそうでないものも売っていますが,
基本的には水を加えれば元のやわらかい状態に戻ってしまい,壊れてしまいます。
つまり普通の砂や粘土は焼き物でもない限り,水を加えると再び軟化してしまうんですね。
しかし,大雨が降ったあとにRC造ビルが水を含んでやわらかくなって倒壊した,
というニュースをご覧になったことがある方はきっといらっしゃらないと思います。
セメントやコンクリートはいわゆる“泥”や“粘土”とどう違うのでしょうか?
セメントが固まる秘訣は「水和反応」です。
つまりセメントを構成する成分と,水が“化学反応”を起こして硬化するという仕組みです。
生コンクリートと呼ばれる状態のどろどろのコンクリートは,ミキサー車の中で乾燥しないように
フタをしておけば安心。。。そう思っていたら大変なことになります。
中でタンクの形のままで硬化し,ミキサー車ごと使い物にならなくなります。
コンクリートは化学反応を起こしているので,発熱もします。
熱を発しながら型枠の中で時間が経過するごとに固まってゆきます。
目安として28日程度で最終的な固さの8割くらいまで硬化するとされていますが,
すべての反応が終わるまでは何十年もかかるといわれています。
こうした特性を活かして,固まる前の状態では,
たとえばモルタルのように糊のような状態を作り,タイルを貼り付ける接着剤として使用したり,
型枠に大量のコンクリートを流し込んで自由に形を作り,
大きな建造物を造ることもできるという便利な建材であるわけです。
―改めて,コンクリート,セメント,モルタルの違いについて。
さて,改めて3つの建築材料の定義の一般的な違いについてまとめてみたいと思います。
ご注意いただきたいのは,それぞれの建材はもっと細かく区分できますし,
それぞれにプロフェッショナルが存在し,沢山の専門の会社が自社の自慢の商品として売り出していらっしゃるわけです。
一つ一つを弊社も全て存じ上げているわけではありません。
あくまでイメージをつかむための大まかな概要として参考になさってください。
・セメント
→コンクリートやモルタルの主な材料となるもの。
*石灰や他の材料を焼成し粉砕して作る。水を加えたものはセメントペースト,ノロと呼んだりもします。
・モルタル
→セメント+砂+水。
*砂は細骨材と区分したりする。モルタルはコンクリートに比べると強度が落ちる。
仕上げに用いられることが多い。例を挙げると外壁タイルの貼り付けや石床の下地に使用したりします。
モルタルは外壁に関する分野でもよく登場します。
・コンクリート
→セメント+砂+砂利や砕石+水。
*砂より大きな体積の骨材が加わる。砂利や砕石は粗骨材と区分したりする。
粗骨材が含まれているかがモルタルとの違い。強度はモルタルより優れている。
材料の70%はセメントや水以外の原料でできており,隙間をセメントや水で満たすことになります。
そのため現場まで生コンを運ぶミキサー車が常に回転しているのは,
常にそれぞれの材料が均一な状態で混ざっているようにさせるためなんですね。
ざっとまとめてみましたがいかがだったでしょうか。
ということは,詳しくは触れませんが,アスファルトはこのセメント系の仲間ではありません。
このような点はRC造やS造の建物を構成する色んな部材のことを理解するのに役に立つ基本的な要素と考えています。
2回にわたっての記事になりましたが,是非参考になさってください。
では,
次回は,「コンクリートの短所と,それを補うパートナーとの出会い」をテーマに記事を書きたいと思います。
Posted by T.H.