建築基準法に基づく外壁点検(外壁調査)の必要性|外壁落下に関わる事故を紹介
外壁点検は建物の安全性を維持するために不可欠ですが、法的な要件を満たしているか不安に感じる方も多いでしょう。
近年、外壁の落下事故が各地で報告されており、建物管理の重要性が高まっています。法令順守だけでなく、建物の劣化防止や資産価値の維持、そして何より人命を守るために適切な調査が求められます。
しかし、どのような調査方法を選び、どの程度の頻度で実施すべきか、判断に迷うことも多いでしょう。
この記事では、外壁点検が必要な理由から、事故事例、調査方法の選び方まで詳しく解説します。
建築基準法に基づく外壁点検(外壁調査)の必要性
建築基準法では、大勢が利用する特定建築物の外壁点検が重要視されています。
これは、壁面の浮きや亀裂を放置すれば落下事故につながりかねず、歩行者などへの被害を防ぐ観点から義務付けられている制度です。
ここでは、建築基準法に基づく外壁点検の詳細を解説します。
建築基準法第12条の内容
建築基準法第12条では、不特定多数の人が利用する建築物について、所有者・管理者が定期的に建物の状態を検査し、行政に報告することが求められています。
特に外壁については、平成20年の建築基準法施行令改正により、特定建築物の定期報告制度が強化され、竣工後10年を経過した建物の外壁全面調査が義務付けられました。
調査は目視や打診だけでなく、赤外線カメラを使った方法などが選択肢に含まれることも特徴です。また令和4年3月に取り決められたドローンによる外壁調査も有効となります。
外壁点検を怠ると、建築基準法に基づき100万円以下の科料が科される可能性があるだけでなく、落下時には民法による損害賠償責任を問われるリスクも高まります。
そのため、適切な時期に外壁のコンディションを確認し、必要に応じて補修することが不可欠です。
実際の報告書には、建物の高さや形状、使用されている外壁材に関する情報を記載するのはもちろん、浮きやひび割れがあれば早期の補修計画が求められます。
外壁落下に関わる事故・事例
日本各地では、経年劣化などが原因で外壁が落下し、住民や通行人が被害を受ける事例が後を絶ちません。
ここでは、近年起きた代表的な事故を挙げて、外壁点検の重要性を解説していきます。
山形県:飲食店のモルタル外壁落下事故
山形県で発生したケースでは、2階部分のモルタル外壁が剥がれ落ち、歩道近くの人に直撃して大きな被害をもたらしました。
調査結果によると、外壁に経年による亀裂が走っていたにもかかわらず、長期間点検されていなかったことが背景にあったとされています。
さらに風雨の影響で外壁内部に水がしみこみ、下地の金属部材に錆が生じたことも落下の一因でした。
こうしたトラブルは、定期報告対象外の小規模建物でも起こり得るため、法の対象に含まれない物件でも自主的な調査が望まれます。
北海道:店舗のモルタル外壁落下事故
ある北海道の店舗では、壁面のモルタル層が大きく剥離し、歩行者に当たり怪我を負わせる事故が発生しました。
敷地近くには水辺があり、湿気や気温変化による腐食が進みやすい環境だったことが大きな要因です。
経年劣化によって鉄板下地が錆び、釘や留め具が脆弱化したため、モルタルごと落下したと考えられています。
この店舗も法定点検が義務付けられていない規模でしたが、改修や防錆対策が適切に行われていれば、事故を回避できた可能性が高かったといえます。
茨城県:内屋根の破風落下事故
体育館の屋根下部分にあたる破風が大きく剥がれ落ちた事故が、茨城県で報告されています。
落下した部材は鉄骨下地にモルタルを吹きつけた構造でしたが、雨漏りなどで侵入した水分が金属部の錆を加速させ、結局破風自体が崩壊しました。
事故直後には建物利用が制限され、修復工事も含めて長期間にわたる運営休止が必要になっています。
また、通行中の人が頭を直撃される大きな怪我を負ったため、施設の管理責任が強く問われました。
こうした災害は、高所の改修作業が難しい大規模建築物で特に起こりやすいといえます。
建築基準法以外で外壁調査が必要な理由
法で定められた点検義務がない建物でも、外壁の調査を疎かにするのは危険です。建築基準法外の理由でも、メンテナンスを行うべき要素が数多く存在します。
建物の劣化状況を確認するため
外壁は、雨や太陽光に長期間さらされ、徐々に傷みが進行します。
劣化が悪化すれば、内部に水が入って断熱層や下地の腐食を誘発し、最終的には構造の強度にまで影響を与える可能性があります。
特にクラック(ひび割れ)や浮きなどは、外観だけで判断しにくい場合もあり、調査を経て初めて補修の必要性を知るケースも珍しくありません。
放置すると改修費が膨れ上がるリスクを伴うため、早期発見と対処が得策です。
つまり、法で対象外の小規模建築であっても、所有者自身が状況を把握しておかないと、知らぬ間に危険度が高まっていることもあり得るわけです。
定期的な点検で、劣化度合いを確かめながら建物の寿命を延ばす意義は大きいといえます。
建物の安全性・機能性を保つため
定期的に外壁調査を実施することで、建物の安全性・機能性を保てます。
外壁の破損が進むと、雨漏りや風の侵入により室内環境が大きく乱されます。劣化部分からの落下事故が起きれば、人身被害だけでなく建物としての信用失墜も免れません。
建物の安全と機能を維持するために、外壁調査を通じて脆弱箇所をピックアップし、早期補修を行う意義は高いといえます。
雨仕舞いの不備や亀裂などを特定して、原因を解消することで本来の性能を保つことができるでしょう。
建物の美観を維持するため
外壁に剥がれや変色が見られると、全体の外観イメージが損なわれます。
住宅の場合は資産価値の低下につながり、店舗やオフィスビルの場合は顧客の印象悪化を招きかねません。
塗装の剥げやタイルの浮きは見た目の問題だけでなく、雨水浸透のきっかけにもなるため放置は禁物です。
業務拡大を考える企業では、美観を整えることでブランド力や集客力を維持できる面もあります。
このように建物の印象だけでなく、実質的な耐久性まで向上し得るというメリットを考慮すれば、外壁点検の価値は高いといえます。
外壁調査の対象となる仕上げ材・箇所
外壁と一口にいっても、用いられる仕上げ材は多岐にわたります。ここでは、外壁調査の対象となる仕上げ材と、対象となる箇所について解説します。
対象となる仕上げ材
一般的に、タイルや石貼り、モルタル仕上げなどの湿式工法が調査対象になりやすいです。
タイルや石材が落下すると重量があり、周囲への衝撃が大きいため、特に重点的な点検が推奨されています。
モルタル仕上げもひび割れから剥離が進むと、大きな破片が剥がれ落ちるリスクが高まります。
逆に、乾式工法や金具で固定するパネルなどは打診の効果が限定的で、別の検査方法が適している場合もあるため注意が必要です。
ただし、乾式工法でも留め具が錆びていると外壁が外れる恐れがあるため、全く調査しなくて良いわけではありません。
仕上げ材の特性を理解し、適切な手法で検査を行うことが重要です。
対象となる箇所
落下すると歩行者などに危害を及ぼす恐れがある箇所が、主な検査の焦点になります。
具体的には、人や車の往来が多い道路沿いや、建物外周を覆う壁面の上部などが該当します。
さらに、花壇や大きな庇がある場所は通行範囲を遮っている場合があり、必ずしも調査必須ではないこともありますが、オーバーハングの有無や植栽の形状によって見極めが必要です。
使用頻度の低い裏側であっても、別の経路から人がアクセスする可能性があれば、調査対象になる場合があります。
誤って「人が通らないから大丈夫」と独断で除外し、万が一の事故が起きれば責任問題に発展しかねません。敷地の状況や設計図を見ながら、安全性を第一に判断する姿勢が大切です。
外壁調査の方法|各方法のメリット・デメリット
外壁調査には、打診と赤外線の他にも複数の手法が存在します。
しかし、国土交通省のガイドラインで代表的とされるのは、ハンマーで叩く打診調査と、温度分布を分析する赤外線調査の二つです。以下、各方法の特徴を詳しく解説します。
打診調査
打診調査はゴムハンマーや打診棒などで直接外壁を叩き、音を頼りに浮きの有無を探る伝統的な方法です。
現場の作業員が足場やロープ、ゴンドラなどを使って一枚一枚確認するため、異常部をその場で簡易的に識別しやすいメリットがあります。
一方で、高所作業の安全確保や人件費がかさみやすく、全体を網羅するには時間がかかる点は留意が必要です。
また、作業員の熟練度によって精度が左右される面もあるため、信頼できる業者を選ぶことが肝要といえます。
剥離しそうな箇所を把握できれば、補修や落下防止策をそのまま実行しやすい点は優れた長所です。
大掛かりな足場を組むなら、他の部位も同時に点検するなど、工夫することで費用対効果を高めることができます。
赤外線調査
赤外線調査は、外壁表面の温度差を解析して、内部の空洞や湿気の侵入を見つけ出す手法です。
気象条件や壁材の特性に影響を受けやすいものの、大面積を短時間で撮影し、一度に状況を把握できるメリットがあります。
近年はドローンを利用した赤外線調査も普及し、高所での足場設置を最小限に抑えられる方法として注目されています。
ただし、浮きが見つかっても実際に補修する際には、打診で正確な場所を再確認したり、足場を組んで修繕する必要が生じたりするケースもあるため、調査のみでは完結しない点に注意が必要です。
導入費用は場合によって打診より安価なことがありますが、高精度の機器を使うほど解析のコストも上がる傾向にあります。
適切な時間帯や天候を考慮した撮影計画を立てることが、正確な結果を得るカギとなるでしょう。
外壁調査の方法の選び方
建物の状況や調査目的によって、打診と赤外線のどちらが適しているかは異なります。以下のポイントを基準に検討すれば、最適な手段を見つけることができるでしょう。
目的
外壁がどの程度傷んでいるかを広範囲に把握したいなら、赤外線のほうが効率的な場面があります。
逆に、緊急度の高い箇所を直接確認して修繕まで行いたい場合は、打診調査を選択するのが良いでしょう。
また、全面打診を行う際は建築基準法施行令で定められた報告に使えることが前提なので、対象建物の規模や使用材料に合わせて計画的に工法を決める必要があります。
調査の最終ゴールが何であるかを明確にすることで、手法の方向性を絞り込みやすくなります。将来的な補修計画や改修スケジュールと合わせて検討すると効率的です。
費用
仮設足場を組む打診は、足場費用だけで数十万円~数百万円にのぼる可能性があります。
一方で、赤外線調査は足場を不要とするケースが多く、ある程度コストを抑えられる場合もありますが、機材レンタル費用や解析費などが加算されることもあり、単純比較は難しいといえます。
また、ドローンを用いる場合は、飛行申請や補助要員の配置費用が発生する可能性があるため、見積段階で項目をチェックすることが大切です。
最も大切なのは、単なる調査だけでなく、補修をどう行うかの全体計画を踏まえて総費用を考える姿勢です。複数社から見積もりを取り、比較しながら自社に合う選択をするのが賢明です。
期間
建物の高さや規模に応じて、調査に必要な期間は変わります。
打診調査は足場組立と解体、作業そのものに日数がかかるため、数週間以上に及ぶケースも珍しくありません。
一方、赤外線調査は撮影自体は短期間で済むケースが多いものの、天候や季節を考慮したタイミングを狙う必要があり、適切な日を待つ期間も発生する可能性があります。
報告書の作成や行政への提出に要する時間も加味して、スケジュールに余裕を持って取り組むことが大切です。
建物を利用している住民やテナントへの周知も忘れず、短期間で終わるか長期になるかを事前に把握しておきましょう。
まとめ
この記事では、建築基準法に基づく外壁点検の必要性から、実際の事故事例、点検方法の選定基準までを紹介しました。
山形県や北海道での落下事故例が示すように、外壁の劣化を放置すると重大な人身事故につながりかねません。
特に、湿式工法の外壁は定期的な点検が不可欠で、打診調査や赤外線調査を建物の状況に応じて使い分けることが重要です。
法定点検の有無にかかわらず、建物の安全性と資産価値を守るためには、計画的な調査が欠かせません。
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