ドローンでの赤外線外壁調査は飛行許可が必要?規制やルールを徹底解説
赤外線外壁調査をドローンで実施する際、飛行許可が必要なのかどうか詳しく知りたい方は多いでしょう。
ドローンを活用した赤外線外壁調査は、コスト・安全性の面で大きなメリットがある一方で、航空法や各種ガイドラインに沿った飛行計画と許可・承認の確認が欠かせません。
この記事では、赤外線外壁調査の基本から、ドローン飛行に関する主な規制・ルール、注意点、業者選びのポイントまでわかりやすく解説します。
赤外線外壁調査とは
赤外線外壁調査とは、赤外線カメラで外壁表面の温度分布を撮影し、その温度差からタイルやモルタルの浮き・剥離、含水などの異常を推定する非破壊検査手法です。
建物を傷つけず、離れた位置から広範囲を一度に撮影できるため、従来の全面打診と比べて作業性や安全性に優れています。また、一定の温度条件や撮影時間帯を守ることで、浮き部分が周辺と異なる温度として鮮明に現れ、劣化箇所の抽出精度を高められる点も特徴です。
近年は、ドローンに赤外線カメラを搭載して上空から外壁を撮影する方法も普及しており、高所や足場設置が難しい建物の調査に活用されています。
赤外線外壁調査(ドローン活用)のメリット
赤外線外壁調査にドローンを組み合わせると、調査コストと工期を抑えつつ、安全性の高い外壁診断が可能になります。
ここでは、特にメリットが大きい3つのポイントを解説します。
低コストで広範囲を調査できる
ドローン赤外線外壁調査は、足場やゴンドラを使う従来方式より大幅なコスト削減が期待できます。
足場設置が不要なため、仮設費や人件費を抑えたうえで、外壁全面を一気に撮影・解析可能です。
仮設足場にかかる調査費用の大半を削減することができ、1㎡あたり120〜350円前後の単価で外壁全体を診断することも現実的です。
建物規模が大きいほど差額が大きくなり、長期的な修繕計画においてもコスト面のメリットは小さくありません。
ドローンで高所も安全に調査できる
高所作業の安全性向上という観点でも、ドローン活用のメリットは大きいです。
これまでの打診調査では、高層部の点検に足場やゴンドラが必要であり、墜落・転落など高所作業特有のリスクを伴っていました。ドローンであれば、オペレーターは地上から操縦するため、作業員が外壁に直に近づく必要がありません。
ドローンの活用は事故リスクの低減に加え、作業時間の短縮や、壁面を傷つけずに調査できる点も評価されています。
12条点検など定期報告に対応した赤外線外壁調査として採用が進んでいるのも、この安全性と効率性が理由のひとつです。
【参考記事】ドローンを使った外壁調査に資格は必要?資格の種類や取得メリットを解説
入居者の心理的負担が小さい
ドローン赤外線外壁調査は、入居者やテナント側の負担が比較的小さい点もメリットです。
足場を長期間架ける必要がないため、日照や眺望の悪化、ベランダ利用の制限、侵入への不安感といったストレスを軽減できます。また、工期自体が短縮されやすく、騒音や人の出入りも抑えられることから、通常の生活や事業活動への影響を最小限にしながら外壁診断を行えます。
「調査は必要だが、入居者への影響が気になる」という管理会社・オーナーにとって、バランスの取りやすい調査手法といえます。
赤外線外壁調査でドローンを活用する際の基本ルール
赤外線外壁調査でドローンを用いる場合も、航空法で定められた無人航空機の「飛行の一般ルール」を守ることが前提となります。
特に、調査計画書の作成や安全管理体制の整備に加え、無人航空機の飛行方法に関する10項目の一般的なルールを遵守することが重要です。
- アルコール・薬物等の影響下で飛行させないこと
- ドローンの飛行前点検を実施すること
- 他の航空機や無人航空機との衝突を回避すること
- 周囲の人や建物など、第三者に迷惑・危険を及ぼさないこと
- 日中に飛行させること(原則として夜間飛行は行わないこと)
- 目視できる範囲内で操縦すること(目視外飛行を行わないこと)
- 人または建物・車両など第三者の物件から30m以上の距離を保つこと
- 催し物(イベント)上空で飛行させないこと
- 爆発物等の危険物を輸送しないこと
- 飛行中に物を投下しないこと
これらの一般ルールを守った上で、別途必要となる飛行許可・承認の有無を確認しつつ、外壁に近接しすぎない飛行ルートや安全対策を計画していくことが求められます。
赤外線外壁調査(ドローン活用)で飛行許可・承認が必要なケース
赤外線外壁調査をドローンで行う場合、航空法上の「飛行禁止空域」に該当するかどうかで、事前の飛行許可・承認が必要かが決まります。
ここでは、飛行許可・承認が必要なケースを具体的に解説します。
空港などの周辺空域
空港やヘリポート周辺の「空港等の周辺空域」に該当する場所でドローンを飛行させる場合は、航空機の安全な離着陸を妨げないよう、国土交通大臣の飛行許可が原則必要です。
この空域は航空法で細かく範囲が定められており、ドローンを活用した外壁調査であっても例外にはなりません。
調査対象建物が空港や自衛隊基地、重要なヘリポートの近くにある場合は、事前に航空局の「無人航空機飛行禁止空域」図やガイドラインを確認し、必要な許可を取得してから調査を行う必要があります。
人口集中地区の上空
人口集中地区(DID)の上空で飛行させる場合は、航空法で定める『飛行禁止空域』に該当するため、原則として国土交通大臣の許可が必要です。
人口集中地区とは、国勢調査で把握された人口密度の高い市街地エリアを指し、ドローン飛行では航空法上の規制対象となる区域です。
都市部での赤外線外壁調査は、この人口集中地区に該当するケースが多く、建物周囲が住宅やオフィスで密集している場合はほぼ確実に許可申請の対象となります。
国土交通省の無人航空機飛行マニュアル等に基づき、人口集中地区での飛行は許可申請を前提に計画する必要があります。
地表・水面から150m以上の上空
地表または水面から150m以上の高さの空域でドローンを飛行させる場合も、航空法で定める飛行禁止空域に該当します。
通常の外壁調査では高さ150mを超えるケースは多くありませんが、高層ビルやタワー型建築物の上部を調査する場合などは、この条件に抵触する可能性があるため注意してください。
ただし、煙突や鉄塔などの高層構造物から30m以内の空域については一部規制が緩和されています。構造物に近接した範囲であれば、150mを超えても禁止空域から除外されるケースがある点もガイドラインで示されています。
緊急用務空域の上空
災害対応や救急・救助活動などのために設定される「緊急用務空域」内でドローンを飛行させる場合も、航空法上の飛行禁止空域に該当し、飛行許可が原則必要です。
この空域は常時設定されているわけではなく、災害発生や大規模イベント等に伴って一時的に指定されることが多いため、調査前に最新情報を確認することが求められます。
緊急用務空域および空港周辺空域については、構造物から30m以内の係留飛行であっても引き続き許可が必要なため、特に注意しなければなりません。
赤外線外壁調査(ドローン活用)における注意点
赤外線外壁調査をドローンで実施する際は、精度の高いデータを得る条件づくりと、周辺環境への配慮が欠かせません。
ここでは、調査を実施するにあたっての注意点をわかりやすく説明します。
天候・時間帯・気温の条件を満たす必要あり
ドローン赤外線外壁調査は「いつ・どんな環境で撮るか」で結果の精度が大きく変わります。
具体的に、晴天または薄曇りで、日較差(1日の気温差)が7度前後以上あり、風が弱い日が望ましいとされています。
また、外壁の方角ごとに適した時間帯があり、南面は午前10〜14時、東面は日の出後〜正午、西面は午後〜夕方など、蓄熱や放射冷却の差が出やすいタイミングを選ぶことで、健全部との温度差が明瞭になります。
強風や雨天、直射日光が強すぎる時間帯は、温度分布が乱れたりドローンの安全性が低下したりするため、避けるのが基本です。
近隣への説明やプライバシーの配慮が必要
ドローンで外壁を撮影する際は、入居者や近隣住民のプライバシーに十分な配慮が必要です。
多くの事業者は、事前に調査日時と飛行範囲を案内し、住戸内や人物、車両ナンバーなどが映り込んだ場合はモザイク処理を行うなどの対応を取っています。
撮影対象はあくまで外壁であり、不要な映像は利用しないことを明示することで、心理的な不安を軽減しやすくなります。あわせて、騒音や安全面への配慮として、飛行時間帯やルートを工夫し、現場周辺の立入制限や誘導を行うことも重要なポイントです。
赤外線外壁調査を依頼する業者の選定ポイント
赤外線外壁調査をドローンで依頼する際は、機体やカメラの性能だけでなく、操縦者の資格や建物診断の知見、実績、調査の進め方まで総合的にチェックすることが重要です。
ここからは、専門業者の選定ポイントをわかりやすく解説します。
ドローンに関する資格と技術力を確認する
まず確認したいのが、ドローン操縦と赤外線診断に関する資格・スキルです。
国の登録講習機関での技能認証や各種ドローンパイロット資格、赤外線建物診断技能士などの有資格者が在籍しているかは、技術レベルを推し量る指標になります。
あわせて、操縦者と解析担当者が建物の構造や外壁劣化に関する知識を持っているか、画像解析ソフトや高解像度カメラを活用しているかも確認しましょう。
ドローン操作だけでなく、「建物診断」としての専門性がある業者を選ぶことが重要です。
調査実績や事例を確認する
次に、これまでの調査実績や事例の有無も重要なチェックポイントです。
公式サイトや資料で、対応してきた建物の種類や件数、ドローン赤外線調査の具体的な事例紹介があるかを確認すると、業者の得意分野や経験値が見えてきます。
特に、自身の建物と規模や用途が近い事例を持つ業者であれば、想定される課題や住民対応なども含めてスムーズに進めやすくなります。
実績の公開が少ない場合は、見積もり相談時に過去事例やレポートサンプルの提示を依頼するとよいでしょう。
調査範囲や打診併用の有無を確認する
赤外線外壁調査を依頼する際は、「どこまで調べてくれるのか」と「打診をどう組み合わせるか」も事前に確認しておく必要があります。
ドローンと赤外線カメラだけでは、すべての外壁異常を確定できないため、抽出された疑わしい部分を対象に近接打診で確認するなど、併用の必要性があります。
そのため、外壁全面または一部か、足場やロープアクセスでの近接打診をどのタイミングで行うか、報告書にどこまで反映するかなどを見積もり段階で擦り合わせておきましょう。
まず赤外線で抽出し、必要な箇所のみ打診で確定するといった段階的な調査フローを提案できる業者であれば、精度とコストのバランスが取りやすくなります。
まとめ
赤外線外壁調査をドローンで実施する際は、飛行許可・承認が必要かどうかを正しく見極め、航空法上のルールを守って運用することが重要です。
特に、人口集中地区や高層建物での調査では、「どこまでが飛行禁止空域に当たるのか」「どの飛行方法に許可が必要か」を踏まえたうえで、安全かつ効率的な調査計画を立てる必要があります。
なお、ドローンを用いた赤外線外壁調査は、人口集中地区や高層建物での飛行許可・承認が必要になるケースが多いため、早めにスケジュールと申請の有無を確認しておくことが重要です。
『Takaoプランニング』では、赤外線カメラを搭載したドローン調査とロープアクセス調査の両方に対応し、建物の構造や立地条件に適した外壁調査方法をご提案しています。
社内には二等無人航空機操縦士や赤外線建物診断の有資格者が在籍しており、飛行許可が必要なケースの相談はもちろん、ドローンが使えない空域での代替調査方法まで含めてご相談いただけます。
外壁調査に関するお悩みごとなら、お気軽に当社までご相談ください。
この記事の監修者

Takaoプランニング株式会社 代表取締役
髙雄 良介
役職
- Takaoプランニング株式会社 代表取締役
- 一般財団法人 日本耐震診断協会 評議員
経歴・専門分野
建物の外壁調査・診断および補修工事において、10年以上の実務経験を有し、これまでに1,000棟以上の建物診断・補修に従事。
現場での調査・施工だけでなく、修繕計画の立案や管理業務まで幅広く対応しています。
赤外線調査・ロープアクセス工法・ドローン調査を組み合わせた診断を強みとし、「調査に基づいた最適な修繕提案」を専門としています。
主な資格
- 施工管理技士
- 赤外線サーモグラフィ(ITCレベルⅡ)
- 特定建築物定期調査員 ほか
