足場を組まない無足場工法とは?メリットやデメリットを解説
外壁調査や外壁補修工事など、建物の外側で行う作業には足場が必要です。
しかし、近年では足場を組まない無足場工法が普及しつつあり、本来であれば足場を組まなければ実現できない作業にも対応できる可能性があります。
この記事では、足場を組まない無足場工法の仕組みや、メリット・デメリットを紹介します。
無足場工法とは
無足場工法とは、足場を組まずに修繕工事や改修工事などを行う方法です。
主にビルの窓掃除を中心に行われてきた工法ですが、近年はこの仕組みを応用して外壁調査や外壁補修工事まで幅広い工事で用いられています。
立地や建物により足場が組めなくても、無足場工法なら工事が可能です。ただし、すべての工事業者が無足場工法を取り入れているわけではありません。
また、経験が少ない作業員だと工事の質に影響する可能性もあるため、無足場工法による工事を検討する場合は業者選びが重要です。
無足場工法の種類
無足場工法には主に三つの種類があります。ここでは、それぞれの特徴を紹介します。
ロープアクセス
ロープアクセスとは、産業用ロープを通したフルハーネスを装着して外壁調査や点検などを行う工法です。
体にロープを固定して移動するため足場を組む必要がなく、スピーディーに作業できます。
ロープアクセスの技術は洞窟探検用に考案されたもので、ロープを使用して建物の昇り降りや左右への移動を容易にできます。
一見危険そうに感じるかも知れませんが、何重にも安全対策が施されており、正しい技術を使用した作業での事故はほとんどありません。
また、ロープアクセス工法は誰でもできるものではなく、安全作業の免許を取得する必要があります。
高所作業を行う際には、メインロープ以外に安全帯を取り付けるためのライフラインを設ける必要もあります。
ゴンドラ
ゴンドラ工法は、屋上に設置した器具からつり下げた可動式のゴンドラに乗って工事をする方法です。
安定性の高いゴンドラで作業を行うため、効率よく広範囲に対応できるメリットがあります。
一方で、ほかの工法に比べて機動力が低く、必要な設備が多くなるためコストが高くなりやすいデメリットがあります。
また、屋上からゴンドラを可動させるロープを垂直に下ろせない場合も、基本的には施工できません。
ブランコ
ブランコ工法とは、マンションやビルなどの高層の建物から垂らしたロープを利用してブランコに座りながら工事をする方法です。高価な道具や準備が必要ないことから、ロープアクセスと同様に費用が安いメリットがあります。
ロープアクセスとブランコ工法は混合されることが多いですが、安全性の面で大きな違いがあります。ロープアクセスは安全基準を満たしている装備を使用しなければなりませんが、ブランコ工法には装備や移動方法のルールがありません。業者によっては簡易なロープを用いて工事を行うこともあり、ロープを使って行う高所作業で発生する事故の多くはブランコ工法で発生しています。
足場が組めない状況
無足場工法は足場が組めないときに役立ちます。ここでは、どのような場合に足場が組めないかを解説します。
建物と建物の間の距離が狭すぎる
建物と隣の建物の距離が狭すぎると、スペースを確保できないため足場を組むことはできません。戸建て住宅の外壁塗装などの際に設置される足場の幅は約60cmで、実際に足を乗せる踏板の幅は約40cm、それを固定する支柱の幅が約10cmです。
隣の建物との幅が60cmあれば足場を組めますが、実際には組み立てのスペースが必要となるため、余裕を持って70cm以上の間隔は必要です。隣の建物との距離が狭いのは都市部だけでなく、集合住宅であれば郊外でも同様の状況となります。
無足場工法は人が通れるスペースがあれば作業ができるため、隣の建物との幅が狭くても工事が可能です。
カーポートの上に足場が組めない
外壁の近くにカーポートがあると、邪魔になって足場が組めません。そのため、足場を組む場合にはカーポートを取り外してはめ直す作業が必要です。
また、カーポートの多くはポリカーボネート製であり、設置期間が長いと紫外線による劣化が進んでいきます。取り外す際に破損する可能性があり、新品に取り換えるための追加料金が発生するケースもあるため注意が必要です。
無足場工法ならカーポートの上に足場を組む必要がないため、取り外す作業や新しく買い直す必要はありません。余分な費用をかけずに工事が進められます。
無足場工法のメリット
無足場工法には足場が不要なこと以外にもさまざまな魅力があります。ここでは、無足場工法のメリットを紹介します。
工事費用を抑えられる
無足場工法のメリットは、足場の組み立てや解体の費用がかからないため工事費用を抑えられることです。
足場を組んだり解体するだけでも数日以上の作業となり、立地によっては警備員や交通整理などが必要となります。
足場を組んだり解体したりするのは工事ができる環境を作るためですが、この作業だけでもかなりの人件費が発生します。
無足場工法なら足場に関する費用がかからないため、工事費用を大幅に減らせます。
防犯面に優れている
無足場工法は足場を組まないため、住宅に侵入されるリスクがなく防犯面に優れているのもメリットです。
足場を組むと工事が終わるまでそのままの状態となるため、作業員がいないタイミングを狙ってベランダや2F以上の窓から侵入されて被害を受けるケースもあります。
また、夜間に足場に誰かが登ったとしても気付くことは難しく、隠しカメラを設置されたり盗撮されるリスクもあります。
無足場工法なら足場を悪用されることがないため、犯罪に巻き込まれるリスクを減らせます。
自然災害時のリスクが減る
無足場工法は、地震や台風などの災害リスクを減らせることもメリットです。
工事期間中に地震や台風などの災害が発生すると、足場が崩れる可能性があります。足場が崩れると改めて組み直すことになり、当初の予定よりも工事が伸びてしまいます。
また、崩れた足場が建物や車を傷つけたり、通行人にケガをさせるリスクもゼロではありません。無足場工法なら、災害によって足場が崩れる心配は必要ありません。
工期が短い
無足場工法は、足場の設置・撤去が不要で工事期間を大幅に短縮できるメリットがあります。初日から工事を始めることが可能で、作業が終わればそのまま終了となります。
また、足場を組まないため、工期の制限なく都合に合わせながら作業を中断・再開することも可能です。
例えば、「ピンポイントで工事をしたい」「早急な工事が必要」のような場合でも、スピーディーに対応できます。
足場を組んで長期的な工事を行うと周辺住民にも迷惑や負担がかかる可能性もありますが、このような心配も必要ありません。
景観が変わらない
無足場工法は、窓から見る景色も外から見る景色も変わらないメリットがあります。
足場を組む大規模修繕では外からの景観が悪くなり、作業員も通るため窓を開けっぱなしにもできません。
通行人には工事をしていることが一目で分かるため、お店の場合は売り上げ減少などにつながる可能性もあります。
しかし、無足場工法であれば工事中であることが目立ちにくいため、いつも通りの景観で作業が可能です。
狭い場所でも作業ができる
無足場工法のメリットは、狭い場所で問題なく作業ができることです。
狭い場所だと足場は組めませんが、無足場工法であれば作業員が通れるスペースがあれば作業ができます。
同じ無足場工法でも、ロープアクセスはゴンドラやブランコなどが不要となるため、より狭い場所でも作業が可能です。
また、部分的な塗装や漏水調査など、大がかりな足場が必要のない局地的な作業を行う場合にも向いています。
届け出が不要
無足場工法で作業を行う場合は、届出が必要ありません。
建物の改修や修繕工事で足場を設置する際、足場が道路からはみ出す場合は警察署や道路管理者に届け出が必要です。
許可証を発行してもらうまでには3日程度かかるため、急を要する状況でもすぐに工事を始めることはできません。届け出が不要な無足場工法であれば許可証を得る時間も短縮できるため、すぐに工事に取りかかれます。
無足場工法のデメリット
無足場工法には時間や費用の負担を減らせるメリットがありますが、注意点もあります。ここでは、無足場工法のデメリットを解説します。
建物によっては工事できないケースがある
無足場工法は建物の形状によって作業に制限がかかるケースがあるため、場合によっては工事そのものができません。
例えば、以下のような建物は無足場工法に向いていません。
- 建物の屋上がロープの設置に不向き
- 建物の一部が突出している箇所がある
屋上に丸環や構造物などロープの吊元がなければ、ロープアクセスやゴンドラでの作業ができません。しかし、特殊器具やアンカーを打ち込めれば作業ができるケースもあります。
また、無足場工法は狭い場所での作業を得意としますが、人が通れる幅を確保できないと作業はできません。
同じ無足場工法でも業者によって対応の可否は異なるため、まずは依頼を検討している業者に相談しましょう。
工事場所が目視で確認できない
無足場工法は、足場を組む場合と異なり工事場所に近づけるのは作業員のみです。そのため、施工後の現場確認は作業員が撮影した写真や動画、報告書などに限られます。
実際に工事が行われているかどうかは業者任せの部分が大きいため、作業実績がある業者を選ぶことが大切です。
ただし、工事場所によっては窓や隣の建物から確認できるケースもあります。
安全性に不安を感じる
無足場工法は宙吊りで作業を行うことから、安全性に不安を感じる方もいるでしょう。また、作業中に工具が地面に落下するリスクもあります。
しかし、ロープやハーネスの専用器具を正しく着用していれば事故が起こる可能性はほとんどありません。工具についても専用の道具を用いて固定し、万が一に備えて作業中は下に警備員を配置します。
また、これらのリスクは足場を組んで作業を行う場合も同様です。
安全対策に関する認識は業者によって異なる部分もあります。リスクを少しでも減らすためには、実績があって信頼性の高い業者選びも重要です。
対応できる業者が少ない
無足場工法は施工の難易度が高いため、対応できる業者が少ないデメリットもあります。
ロープやゴンドラを使って作業ができる人員の確保、施工方法を理解している代理人など知識や経験を有しているスタッフが必要です。
特にロープアクセスについてはメインロープ以外のライフラインを設ける必要があり、業者には対応できるだけの技術も必要とします。厳格な基準が設けられていることから、対応している業者はより少ないです。
このような理由から、地域によっては無足場工法に対応している業者が見つからず、選択肢に入らないケースもあります。
まとめ
この記事では、足場を組まない無足場工法の仕組みやメリット・デメリットを紹介しました。
外壁工事では足場を組んで作業するイメージをお持ちの方も多いでしょう。足場を組むとなると、工事に時間がかかり近隣住人への配慮も必要です。
しかし、ロープアクセスやゴンドラ、ブランコなどの工法を用いることで、足場を組まずに工事を行うことができます。足場を組まないことで、費用や時間の節約にもつながります。
しかし、無足場工法には高度な知識や技術を必要とし、特にロープアクセスは対応している業者が少ない工法です。
安全に工事を行うためにも、実績があって信頼できる業者に依頼する必要があります。
Takaoプランニングでは、ロープアクセスやドローンを用いた外壁調査や補修を行っています。また、赤外線カメラを用いて人が直接確認できない箇所の調査も可能であり、スタッフが連携して完成度の高い報告書の作成も承ります。
お見積りは無料ですので、外壁調査が必要な場合はぜひお問い合わせください。